こんにちは。
ショップ「和紙ラボTOKYO」を運営する東京和紙の篠田です。
先日、オンラインイベントで東京和紙についてお話させていただく機会を頂きました。
何を話せばよいかいろいろ迷いました。
オンラインということもあって、実際の商品や和紙を触れていただくことはできません。
ただ話すだけではなく、参加されている方々の関心はどこにあるかをぜひ聞いてみたいということでいくつか質問をさせていただきました。
当日は、きちんと説明できなかった部分もあるので、いくつかまたこのページでお答えさせていただこうと思います。
まずは、どんな感じだったかをご紹介します。
きっかけは、当方のオンライン和紙作りワークショップにご参加いただいたことがはじまりでお話を頂きました。
このdentou庵の背景は以下のようです。
簡単に明記しますが、下町や伝統工芸を広めたいという考えに賛同して今回お話させていただくことにしました。
dentou庵の詳細はこちら
下町と伝統工芸と和紙のつながりはやはり「浅草紙」です。
この話と東京和紙ならではの海外でのエピソードも中心に話そうと考えました。
浅草紙に関しての詳細はこちら
あとは、当方の手すき和紙製法の流れをまとめた動画もご紹介して他の和紙屋さんとの違いなどを見ていただければと考えました。
そのほかは、参加者からの質問やこちらからの質問で時間内におさめていこうと想定していました。
準備段階で、動画の音声が流れず止まってしまうハプニングが…。
仕方なくHPの画像を使って説明することにしました。
一番見て頂きたかったのに、残念。
今後は改善が必要と反省。
なんとご参加いただいた人数は約30名(申し込みでは40名あったそうです)
これだけ関心をもって頂けたのはとてもうれしいことです。
許可を頂き撮らせていただきました。
北は北海道から下は愛知、和歌山からご参加頂きました。(目視の限り…)
これはオンラインならではのメリットですね。
特に多かったのは千葉県の方々で、横浜や東京の方もいらっしゃいました。
和紙について話すまえにどうしても聞きたかったことです。
結果は、半分半分くらいでしたが、ちょこっと「いいえ」の人が多かったようです。
(でも「いいえ」と言っている方も実際は触れているんですよね…。
理由はご参加いただいた方々に説明させていただきました)
こちらも気になる質問で、意外な回答でもありました。
折り紙、紙漉き体験は想定しておりましたが、名刺入れ、懐紙や箸置き、筆箱などは意外でした。
皆さん、身近で和紙に触れていらっしゃいました。
和事を習っている方も多かったのかもしれませんね。
こちらも半分半分のご意見に分かれました。
当然、和紙は何から作られているかもご存じの方も同様の人数だったように思えます。
ここで、手すき和紙の製造工程を説明しました。
途中、音声が切れるというハプニングが起こり、口頭の説明だけで進めるのがちょっと残念でした…。
途中、クイズ問題を出しながら進行し、浅草と東京和紙でもっとも重要な浅草紙について説明しました。
これも本来はHPを見ながら説明したかったのですが、昔の浅草紙を模倣した和紙を見せながらお話しました。
今はコロナ過で中止しているのですが、浅草紙の歴史をたどる街歩きツアーを開催しているので、落ち着いたらぜひご参加いただけると嬉しいです。
参加者の皆さんからも質問を頂いたので、ここで改めて説明したいと思います。
和紙といってもいろんな和紙があります。
当方は楮(こうぞ)という植物から手作業でつくっている手すき和紙ですが、他にも機械で製造していたり、別の材料などを混合して作っている和紙もあります。
なので、一概で違いを見分ける方法というのは難しいと思います。
その中でもわかりやすいのはまずちぎってみることです。
和紙は基本的に植物の木皮の繊維のみで作られているため、とても繊維が長いです。
洋紙の場合は、パルプなどを粉砕して接着剤で固めてシート状にしたものが大半なので、繊維がとても短くすぐに破けます。
あと洗濯してみるのもわかりやすいですね。
レシートを洋服のポッケに入れっぱなしで洗濯機に入れてしまった経験がある方はすぐにお分かりだと思います。
上記にも明記しましたが、和紙にも種類があるのでここでは古くから伝わる手すき和紙を作れるかどうかでお答えします。
地域によっては可能ですが、大半は難しいと思います。
なぜなら水が違います。
日本は軟水なので薄くなめらかな和紙を作ることができます。
アメリカ、ヨーロッパ、中東系は硬水のため、和紙作りに大事なトロロアオイのネリ(粘り成分)が効きません。
当方も昨年海外で和紙作り実演やワークショップをする際は、軟水の水を購入して混合して開催しました。
また、原料を何を使うのかにもよりけりです。
基本的に楮(こうぞ)などの和紙原料は全世界に原生してるわけではないので、植物が変われば製造方法も変わります。
中国から紙作りが始まり、日本へは薄い和紙を作る技術が向上し、ヨーロッパ系には厚みのある紙作りが伝播しました。
よって、どんな紙を作るかで答えも変わります。
国産原料で作った手すき和紙で作るならば高額な値段になります(;^_^A
また、基本的に和紙は印刷には適しません。
繊維の問題です。
和紙は毛ば立ちやすいので、印刷機のローラーに繊維が絡まり止まってしまうリスクが高いです。
また、紙糞(しふん)といって繊維のカスが表面に残ってしまうので印刷しても白点のように剥げてしまいます。
ただし、原料は問わず機械で漉いた和紙で印刷している工場があります。
当方でもそこで和紙千代紙を製造したことがあります。
そこならば印刷できるので、絵本を作ることは可能です。
また、同様に家庭用プリンターに適したインクジェットやレーザー用和紙も他社からいくつか販売しています。
コピー用紙までは安価ではありませんが、普通にプリントすることは可能です。
そろそろ時間が迫ってきたので、もっとも重要な質問をさせていただきました。
特に最近和紙に触れたことがないと答えた方に聞いてみたかったのです。
今回は、触れたことがある方も含めて答えていただきました。
名刺、財布、パスケース、かばん、上着、家具、食器などなどでした。
中には「食べられるものがあったらいいな」と回答されている方もいらっしゃいました。
皆さんが答えられたもののほとんどが和紙でも作られて販売しています。
当方でもパスケース、かばん、名刺も作っていますし、座布団も作っています。
サンプルでは、酒器、ソファー用の和紙も作りましたし、他社では洋服を和紙で作っていますし、もともと日本では「紙布(しふ)」や「紙衣(かみこ)」と言って和紙で作られた着物などがたくさんあります。
食べられるものといえば、当方では「食す和紙プロジェクト」も行っています。
今は、コロナ過でできていませんが「食す和紙ワークショップ」も開催しています。
時間ギリギリまでお話させていただきましたが、まだまだ伝えきれていないこともたくさんありました。
最後に和紙に関する言葉があるのでいくつかご紹介してイベントは閉幕となりました。
私が一番に伝えたかったのは、購入者側も気にして情報をキャッチする力をつけてほしいということでした。
当方だけでなく他の和紙屋さんもあらゆる方法でみなさんに情報を提供しています。
当方は、このWEBサイトだけでなく、SNSもほぼ毎日更新していますし、実店舗も運営しています。
そこには和紙や水引に関する情報や商品をお伝えしています。
当初「和紙の活用方法を教えてほしい」という質問に答えてほしいといわれたのですが、違和感を感じていました。
たくさん発信しているのにも関わらずその質問で何を求めているのかが分からなかったからです。
なので、あえてこちらから質問4を提示させていただきました。
結果は、存在している商品ばかりでした。
だからこそ受け身だけでなく関心をもって収集していただけるようにと切に願います。
需要と供給がバランスよくなければ、和紙だけでなく伝統工芸は廃れていく一方です。
これをきっかけに興味をもって行動していただけることを願うばかりです。
当方もどんどん情報を発信して受け取っていただけるように精進します。
最後までお話を聞いていただき、本当にありがとうございました。
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