こんにちは。
東京和紙の篠田です。
七月七日は七夕ですね。
短冊に願いはもう書きましたか?
私は、「コロナ退散」「健康第一」「商売繁盛」を書きました。
(動画を見てね)
七夕はとても和紙とつながりが深い行事の一つです。
その理由を少しですが、ご紹介します。
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1、七夕と和紙のつながり
江戸時代までは、日本の紙といえば和紙だったので、願い事なども和紙に書いていたことでしょう。
実は奈良時代には、梶の葉に願い事を書いていたのです。
これが梶(かじ)の葉です。
万葉集にこんな歌が記されています。
「我が背子にうら恋ひ居れば天の川 夜船漕ぐなる梶の音聞こゆ」
(あの方に恋い焦がれていると天の川から梶の音が聞こえてくる)
「天の川とわたる船の梶の葉に思ふ事ことをも書きつくるかな」
という歌が記されています。
七夕には里芋の葉に受けた露で墨をすり、梶の葉に恋文を書いて川に流すと願いが叶うと言われていたそうです。
ロマンチックですね~~。
また、七枚の梶の葉に歌や詩を書いて供える風習は、恋の成就だけでなく、技芸の向上にも縁起が良かったようです。
(他にも神様が召し上がる器としても供えられていたそうです)
予想以上に大きいサイズの葉なのです。
では、なぜ和紙とつながりがあるのかというと、梶も和紙の原料なのです。
梶=クワ科 コウゾ属
楮(こうぞ)よりも少し緑色の幹をしています。
地域によっては、梶の方が多く栽培されているため主原料にされている和紙屋さんもいらっしゃいます。
東京和紙も、主に楮(こうぞ)を原料に和紙を作っていますが、梶の木も原料に含まれています。
(実は、東京にもあちこちに生えています)
梶の葉に歌を書いていたのも納得できるものがあります。
紙になる前にも深いつながりを感じます。
これからも楮(こうぞ)だけでなく、梶(かじ)の木からも和紙を作っていきたいと思います。
是非、皆さんのお近くに梶の木を発見したら、教えてくださいませ。
2、七夕に関する和紙文様
和紙文様と聞くとなんのことが分かりにくい方もいらっしゃるでしょう。
いわゆる「千代紙」や「折り紙」と聞くとイメージしやすいですね。
華やかな絵柄が連続に刷られている和紙を総称して
「友禅和紙(ゆうぜんわし)」と言います。
この一つ一つの絵柄(文様)には縁起の良いエピソードや深い意味があるのです。
着物や器などに描かれている文様と意味は同じです。
ただ、当方は和紙屋なので、和紙に描かれている文様を中心にご紹介してます。
★七夕文様
七夕文様が刷られている和紙(友禅和紙)です。
笹の葉や短冊が描かれていますが、他にも糸巻や琴や筆なども描かれていますね。
実は、織姫や彦星の伝説だけが七夕ではないのです。
もともと奈良時代に手芸の上達を願う「乞巧奠(きっこうでん)」の宮中行事が元に織姫と彦星の中国の伝説や星祭伝説が組み合わせて現在の七夕があると言われています。
梶の葉の項目でも技芸の向上を願うと明記していた通り、いろんなものが組み合わせて現代まで受け継がれています。
よって、願いが叶うだけでなく芸術面でも上達できる縁起の良さが込められています。
★星文様
七夕には短冊に願い事を書いて星に祈りますね。
星は宇宙に神を感じる文様と言われています。
平安時代から陰陽五行説をもとに天文や暦を占う陰陽道がさかんになり、そこから星を文様化されるようになったと言われています。
また、円を星に見立てた文様もあります。
★笹文様(竹文様)
七夕には笹が必須ですね。
笹=竹ですね。
竹は神聖な植物として古来より神事に多く用いられてきました。
まっすぐに勢いよく伸びて成長が早いことから物事が加速して進められると言われています。
また、笹と塩で作る竹塩は魔を祓うことができると古事記にも記載されています。
★短冊文様
これも七夕には欠かせませんね。
もちろん、「願いが叶う」の縁起の良さを込めています。
他にも平安時代から、長細い和紙=短冊に歌を書いていたことから芸術を高めるとも言われています。
★牛文様
彦星は牛飼いでしたね。
牛は、天満宮(別府)の臥牛(がぎゅう)像から、天神様の使いという説があって願い事を聞いてくれると言われています。
また、牛の像を撫でると病気が治って長生きできるという信仰が江戸時代から始まったそうですよ。
★反物文様?
織姫は機織りの技術が素晴らしかったと言われています。
七夕を「機まつり(はたまつり)」と呼んでお祭りをする地域があります。(埼玉県蕨市)
機織りとはつまり反物を織り上げていくことですね。
和紙には反物や着物、袖などを描いたものが多いです。
文様としては過去確立されたものは見つからなかったのですが、調べていくと縁起の良いエピソードがありました。
結納では、両家がそれぞれ縁起の良い結納品を贈り合いします。
指輪、熨斗などの他に結納金があります。
これは「小袖料」と言われています。
昔は、現金ではなく現物の着物や帯などを男性から女性に向けて贈られていました。
奥様の貞操と従順を示し、お返しとして女性から男性には夫の役目を表す袴が贈られたと言われています。
つまりは、双方ともに誠実で夫婦を添い遂げる円満を誓う意味があったのではと考えます。
現代では、現金となって「このお金で結婚の準備金にしてください」という意味になってきたようです。
(結納金や小袖料に関しては諸説あり)
一つ一つに深い物語が見えて面白いですね。
七夕に関するエピソードは日本や中国だけでなくエジプトやフィンランドにもあるそうなので、世界的な行事でもあるんですね。
まだまだ他にも和紙に描かれた文様はたくさんあります。
興味がある方はぜひワークショップにもご参加頂けると嬉しいです。
コロナの影響もあるので、オンラインセミナーも企画しております。
準備が整ったらお知らせしますね。
2020年の7月7日は、星が見えるか分かりませんがゆっくり夜空を見ながらひと時を過ごすのも風流ですね。
余談ですが、7月7日に雨が降ると「催涙雨(さいるいう)」と呼ぶそうです。